2025年7月、NTT東日本の初台本社にある実証実験施設「Wellness Lounge™」で、少し興味深い取り組みが行われました。

テーマは「遺伝子」です。

遺伝子検査サービス「chatGENE」を提供する株式会社KEAN Healthが、NTT東日本社員を対象に「遺伝子 なぜ? なに?知っトク講座」というワークショップを実施。

約150名の社員が参加し、自身の遺伝子検査結果を見ながら、お酒の強さやカフェインとの相性、疾病リスクと遺伝子との関係などについて学びました。

NTT東日本「Wellness Lounge™」で開催された遺伝子ワークショップの様子。登壇者が「カフェインとの相性」と題したスライドを使い、遺伝子解析結果とカフェインの代謝スピードについて説明している。
NTT東日本「Wellness Lounge™」で開催された遺伝子ワークショップ(提供:株式会社KEAN Health)

約150名の社員が「自分の身体を知る」ことから健康について考える

今回の取り組みで個人的に面白いと思ったのは、「社員に健康について教える」という一方通行の施策ではないことです。

参加者は事前に遺伝子検査「chatGENE」を受検。

その結果を実際に見ながら、遺伝子について学ぶ30分のワークショップが計8回実施されました。

会場となった「Wellness Lounge™」は、NTT東日本がNTTデータ、ストーリーラインと協働で運営する実証実験施設です。

さまざまな企業のテクノロジーを活用し、健康状態や感情の可視化などを通じて、社員のウェルビーイング向上を目指しています。

今回のワークショップ後のアンケートでは、

  • 満足58.6%
  • やや満足34.6%

合計93.2%が満足側の回答。

また、「ウェルビーイングに関する意識向上に役立ったか」という質問についても、

  • とても役に立った29.8%
  • 役に立った58.0%

という結果が公表されています。

つまり約9割が、ウェルビーイングへの意識向上に役立った側の回答をしています。

もちろん、これは一つのワークショップに対する参加者アンケートであり、長期的な健康状態や生産性の改善を証明するデータではありません。

それでも、「自分自身のデータ」を入口として健康について考えてもらうというアプローチは、これからの健康経営を考えるうえで興味深い事例だと思います。

なぜ「自分を知る」というアプローチなのか

健康に関する情報は、今の時代かなり身近になりました。

運動した方がいい。

睡眠を取った方がいい。

食生活を改善した方がいい。

ストレスを溜めない方がいい。

おそらく多くの人が、一度は聞いたことがあると思います。

一方で、「知っていること」と「自分ごととして行動すること」は別です。

今回のNTT東日本での取り組みでは、一般的な健康情報を伝えるだけではなく、参加者自身の遺伝子検査結果を確認しながら学ぶという方法が採られました。

「健康になりましょう」

という大きなテーマから始めるのではなく、

「自分の身体には、どんな特徴があるんだろう?」

という興味から入る。

健康について考えてもらう入口として、一つの考え方なのではないでしょうか。

なぜ、IMADEが「健康経営」を取り上げるのか

株式会社IMADEは、健康経営専門のコンサルティング会社ではありません。

普段は営業やマーケティング、事業開発などを通じて、さまざまな業界の経営者や事業責任者の方とお会いしています。

また、経営者交流会や地方企業との商談など、リアルな場へ足を運ぶことも大切にしています。

そこで話をしていると、経営課題は「売上をどう伸ばすか」だけではないと改めて感じます。

採用が難しい。

社員に長く働いてほしい。

組織のコミュニケーションを良くしたい。

社員がより生き生きと働ける会社にしたい。

会社として新しい福利厚生を考えたい。

事業を伸ばすために営業やマーケティングへ投資することは、もちろん重要です。

ただ、その事業を動かしているのは最終的には「人」です。

だからこそ、売上を伸ばすことと同じように、

「社員がどんな状態で働いているのか」

について考えることも、経営の一部になってきているのではないかと感じています。

今回NTT東日本で行われた取り組みを見て、健康経営というものを改めて調べてみることにしました。

そもそも「健康経営」とは何なのか

経済産業省は健康経営を、

「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」

としています。

つまり、単純に福利厚生を増やすことではありません。

従業員への健康投資を通じて、

  • 従業員の活力向上
  • 生産性の向上
  • 組織の活性化

などにつなげ、最終的には企業の成長や企業価値の向上を目指していく考え方です。

実際、健康経営に取り組む企業は増えています。

2026年3月に発表された「健康経営優良法人2026」では、

  • 大規模法人部門3,765法人
  • 中小規模法人部門23,085法人

が認定されました。

もはや一部の大企業だけが考えるテーマではありません。

健康経営優良法人制度自体も、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから社会的な評価を受けられる環境を整備する目的で設けられています。

健康への取り組みが、社内だけの話ではなくなってきています。

「健康経営をやること」が目的になっていないか

一方で、ここは個人的にかなり重要だと思っています。

「健康経営が重要らしい」

となったときに、

とりあえず健康イベントをやる。

とりあえず福利厚生を増やす。

とりあえず何かサービスを導入する。

これでは、施策を導入すること自体が目的になってしまいます。

健康経営について調べていくと、企業が考えられる選択肢は非常に多くあります。

だからこそ、

「何を導入するか」より先に、「自分たちはどんな会社にしたいのか」

を考える必要があると思います。

例えば、

  • 「社員が自分自身の健康について考える会社にしたい」
  • 「メンタル面で悩んだとき、すぐ相談できる会社にしたい」
  • 「忙しい社員でも健康的な食事を取れる会社にしたい」
  • 「運動するきっかけを会社として作りたい」
  • 「女性が健康上の悩みを抱えながら働き続けなくていい環境を作りたい」

目的によって、必要な施策は変わります。

健康経営には、さまざまな選択肢がある

例えば「健康経営」と一言で言っても、企業が考えられる取り組みにはさまざまなものがあります。

自分の身体を知る

健康診断、各種検査、遺伝子検査などを通じて、自身の身体について知るきっかけをつくる。

今回紹介したNTT東日本での取り組みも、この領域に近いものです。

心の健康を守る

ストレスチェック、メンタルヘルス研修、カウンセリング、外部相談窓口など。

「問題が発生してから対応する」だけでなく、相談しやすい環境を事前につくることも一つの選択肢です。

食生活を改善する

健康的な食事を取れる環境、設置型社食、栄養教育など。

特に忙しい職場では、本人の意識だけに依存せず、健康的な選択をしやすい環境そのものを作るという考え方があります。

運動するきっかけをつくる

運動イベント、スポーツ活動、ジム利用支援、ウォーキング施策など。

会社として運動するきっかけを提供する方法です。

健康について学ぶ

研修やセミナーなどを通じて、社員自身のヘルスリテラシーを高めていく。

これも健康経営の重要な選択肢です。

大切なのは、どれが一番優れているかではありません。

「自社が実現したい状態に対して、何が必要なのか」

から選ぶことだと思います。

「自分を知る」ことから始める健康経営という選択肢

今回紹介した株式会社KEAN Healthでは、遺伝子検査サービス「chatGENE」を展開しています。

NTT東日本で行われた取り組みでは、単に検査キットを提供するだけではなく、検査結果をもとにしたワークショップを組み合わせることで、社員が自身の身体やウェルビーイングについて考えるきっかけを作っています。

健康経営に取り組む方法は一つではありません。

その中で、

「まず社員一人ひとりが、自分自身について知るところから始める」

という方法も、一つの選択肢になり得ます。

株式会社KEAN Healthの取り組みを見る

「何を導入するか」ではなく、「どんな会社にしたいか」

今回、NTT東日本での取り組みをきっかけに健康経営について改めて調べてみました。

調べれば調べるほど感じるのは、

「健康経営=このサービスを導入すればいい」

という単純な話ではないということです。

企業によって、

社員数も違う。

年齢構成も違う。

仕事内容も違う。

抱えている課題も違う。

だからこそ最初に考えるべきなのは、

「何を導入するか」ではなく、

「社員にどう働いてほしいのか」

「どんな会社をつくっていきたいのか」

なのではないでしょうか。

その未来を考えたときに、必要な選択肢を知る。

IMADE INSIGHTSでは今後も、私たちが実際に経営者や企業と接する中で出会った取り組みを起点に、

「こんな経営の選択肢もある」

という情報を紹介していきます。

次の経営の一手を考えるきっかけになれば幸いです。

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