「AIを使えば、自分たちでもここまで作れるようになった。でも、これを本当にお客様に使ってもらって大丈夫なのかが分からない。」

最近、ある経営者の方との会話の中で、こんな相談をいただきました。

相談いただいたのは、国内外の美容領域で事業を展開されている企業の経営者の方です。

AIの進化によって、WebサイトやCRM、業務システム、デザインなど、これまで外部の制作会社や開発会社へ依頼していたものを、自社で作れる範囲が急速に広がっています。

一方で、実際に作ったものを「事業として世の中に出す」となると、新しい不安が生まれます。

  • 顧客情報の管理は大丈夫なのか。
  • 情報漏洩につながるような設計になっていないか。
  • 外部システムとの連携は正しく動くのか。
  • AIが生成したコードを、そのまま本番環境で利用して問題ないのか。
  • そして、そもそもこの設計は事業にとって本当に最適なのか。

「作れるようになった」からこそ、その先にある「本当に出していいのか?」という課題が見え始めています。

「作れない」から、「作った後が怖い」へ

これまでシステム開発の相談といえば、

  • 「システムを作ってほしい」
  • 「Webサイトを作ってほしい」
  • 「社内にエンジニアがいない」

といった、「作ること」に対する相談が中心でした。

しかし今回いただいた相談は違いました。

すでに、自分たちである程度作れている。AIに聞けばコードも生成できる。Webサイトも作れる。CRMも構築できる。簡単な社内システムや業務ツールも作れる。デザインまで生成できる。

問題は、その先でした。

「これ、本当に世の中に出して大丈夫ですか?」

AIは「動くもの」を作ってくれます。

しかし、「動くこと」と「企業が責任を持って顧客に提供できること」は同じではありません。

特に顧客情報や個人情報を扱うサービスであれば、単純に画面が表示され、機能が動いたからといって「完成」と判断することはできません。

そこで出てきたのが、「一度、プロのエンジニアに目を入れてほしい」というニーズでした。

AIが変えたのは、「開発スピード」だけではない

生成AIによって、システム開発の生産性は大きく変わり始めています。

これまで外部へ依頼していた仕事を社内で進めたり、エンジニアではない人がプロトタイプを作ったりすることも、以前より容易になりました。

ここで重要なのは、「AIによって開発が速くなった」という話だけではありません。

企業がシステム開発会社に求める価値そのものが、
変わり始めているということです。

従来のシステム開発では、

  • 「エンジニアが何人必要なのか」
  • 「何カ月かかるのか」
  • 「一人あたりの単価はいくらなのか」

という「人月」を基準として費用を算出するモデルが広く使われてきました。

しかし、AIによって10時間かかっていた仕事が1時間になったとしたら。

企業が購入したいものは、本当にその「1時間」なのでしょうか。

大手SIerでも始まる「人月から価値へ」の転換

この変化について、日経クロステックでも興味深い記事が掲載されています。

日経クロステックの記事「富士通FDEが崩すSIの『常識』、IT部門より事業部門 人月より利用料」の見出し画像。
日経クロステックの記事より

従来のSIビジネスで一般的だった「人月」を中心とした考え方から、サービスの利用や顧客に提供する価値を軸としたモデルへの変化が取り上げられています。

この動きは富士通だけではありません。同じく日経クロステックでは、IT大手4社がFDEの体制拡充を急いでいることも報じられています。

日経クロステックの記事「IT大手4社、『FDE』拡充急ぐ 日立は26年度内に国内1000人」の見出し画像。NTTデータ、NEC、富士通、日立の社名看板が並んでいる。
日経クロステック「IT大手4社、『FDE』拡充急ぐ 日立は26年度内に国内1000人」

私たちが今回、お客様との会話から感じた課題も、この大きな変化と重なります。

AIによって生産性が上がるほど、「何人が、何時間働いたのか」よりも、「企業が欲しい状態を実現できたのか」の方が重要になる。

システム開発の価値の測り方そのものが、変わり始めているのではないでしょうか。

私たちが考えたのは、「エンジニアを売らない」ということ

株式会社IMADEは、従来型のシステム開発会社ではありません。

普段は営業、マーケティング、事業開発などを通じて、さまざまな企業の経営者や事業責任者と、新しい事業や売り方について考えています。

その中で今回感じたのが、「全部作ってもらう必要はない。でも、全部自分たちだけで判断するのも怖い」という新しいニーズです。

そこで、私たちは一つの考え方にたどり着きました。

「エンジニアの時間」を提供するのではなく、
「企業が安心して開発を前に進められる仕組み」を提供する。

「何人動いたか」は、お客様には関係ない

例えば、ある企業がAIを活用して、新しい顧客向けサービスを開発したとします。

必要になるのは、

  • システム設計のレビュー
  • セキュリティ上のリスク確認
  • 顧客情報やデータの取り扱い確認
  • 外部システムとの連携確認
  • AI生成コードの確認
  • 技術的な改善提案
  • サービスローンチ前のレビュー
  • 問題発生時の技術相談

などです。

これらを確認するために、裏側で一人のエンジニアが動くこともあれば、複数の専門家が確認することもあります。

しかし、お客様にとって本当に重要なのは、「何人が動いたか」ではありません。

セキュリティに詳しい人が必要なら、その人が見る。インフラの専門性が必要なら、その領域に詳しい人が見る。AIについて判断が必要なら、その領域を確認できる人が入る。

裏側で一人動こうが、三人動こうが、それは提供側の話です。

お客様が欲しいのは、

「必要なときに、必要な専門性へアクセスできる状態」

なのではないでしょうか。

月額10万円。「人月」ではなく「仕組み」を購入いただく

そこで株式会社IMADEでは、月額10万円から利用できる「外部技術顧問」型のサービスを開始しました。

ただし、このサービスは、「月額10万円でエンジニアを○時間使えます」というものではありません。

購入いただくのは、人ではなく「仕組み」です。

基本的な考え方は、「自社+AIで、できるところまで作る。」です。

Webサイトを作る。CRMを構築する。業務システムを作る。新しいサービスを開発する。AIを活用して、どんどん試していただく。

私たちは、そのスピードを止めたくありません。

その上で、

  • 「これを顧客に提供していいのか?」
  • 「この設計で問題ないのか?」
  • 「技術的なリスクを見落としていないか?」

というタイミングで、プロのエンジニアが目を入れる。必要であれば、改善方法まで一緒に考える。

つまり、月額10万円で購入いただくのはエンジニアの稼働時間ではなく、「自社だけで技術判断を抱え込まなくていい状態」です。

「全部外注」と「全部自社」の間をつくる

これまで企業のシステム開発には、大きく2つの選択肢がありました。

一つは、開発会社へ依頼する。もう一つは、社内にエンジニアを抱える。

しかしAIによって、その間に新しい選択肢を作れるようになったと考えています。

  1. 自社 × AI
  2. まず自分たちで作る
  3. 専門家がレビューする
  4. 必要なところだけ改善する
  5. 事業として実装する

すべてを外注しない。だから、企業側にノウハウも残る。

一方で、すべてを自社だけで判断しない。だから、専門領域における見落としのリスクを減らせる。

企業自身が主導権を持ちながら、必要な専門性だけ外部から取り入れる。

これが、AI時代に合った開発体制の一つになるのではないかと考えています。

AI時代、「効率化すると売上が下がる」モデルは続くのか

人月モデルには、一つ面白い構造があります。

10時間かかっていた仕事を、AIによって1時間でできるようにしたとします。企業側から見れば、大きな進歩です。

しかし、時間を売っている側からすると、請求できる時間が減ります。

「生産性を上げるほど、売上が下がる」

という矛盾が生まれる可能性があります。

だからこそ、AI時代には提供側のビジネスモデルそのものも変える必要があるのではないでしょうか。

お客様が欲しいのは、10時間の作業ではありません。

  • 安全にサービスをローンチできる。
  • 困ったときに技術的な相談ができる。
  • 間違った方向に開発が進むリスクを減らせる。
  • 事業を止めずに前へ進められる。

こうした「結果」や「状態」に価値がある。

だから私たちは、人月ではなく「仕組み」に価格をつけます。

AIに仕事を奪われるのではなく、専門家の役割が変わる

AIによって、エンジニアが必要なくなるとは考えていません。

むしろ、エンジニアに求められる役割が変わっていくと考えています。

これまでの「手を動かしてすべてを作る人」から、「AIと人間が作ったものを理解し、判断し、事業として実装できる状態へ導く人」へ。

AIが作れる範囲が広がれば広がるほど、人間にはより高度な判断が求められる。

  • 何をAIに任せるのか。
  • 何を人間が確認するのか。
  • どこにリスクがあるのか。
  • 何を直すべきなのか。
  • そして、どこまで確認すれば事業として前へ進められるのか。

「作業」ではなく「判断」に、専門家の価値が移っていくのかもしれません。

AIで作って、専門家と社会実装する

今回のサービスは、最初から「外部技術顧問を作ろう」と考えて始めたものではありません。

国内外の美容領域で事業をされている経営者の方から、「AIで作れるようにはなった。でも、最後にプロに見てもらわないと怖い。」という声をいただいたことがきっかけでした。

普段、さまざまな企業の事業開発に携わっていると、こうした「市場が変わったことで新しく生まれた困りごと」に出会うことがあります。今回も、その一つです。

AIによって「作ること」が民主化される。だからこそ次は、「作ったものを、どう社会に実装するか」が重要になる。

企業が購入するのは、人の時間ではない。「安心して、自分たちで事業を前に進められる仕組み」を購入する。

その裏側で一人が動いているのか、複数人が動いているのか。AIがどこまで作業しているのか。それは、本質ではありません。

必要なときに必要な専門性が入り、企業が自分たちのスピードを落とさず前へ進めること。

AIで作って、専門家と社会実装する。

私たちは、そんな新しい企業とエンジニアの関係を作っていきたいと考えています。

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LIC株式会社と提携し、FDEの提供を開始しました

この記事でご紹介した課題は、一社だけで応えきれるものではありません。

ユーザー企業様からいただいたお声をもとに、株式会社IMADEはLIC株式会社と業務提携し、FDE(Forward Deployed Engineer)の提供を開始しました。

FDEは、できあがった要件を受け取って開発する従来の形とは違い、エンジニアが事業の前線に入り込む働き方です。

具体的には、次のようなことを行います。

  • 営業や事業の現場に入り、何が課題なのかを一緒に見極める
  • 思いついた仮説を、数日で実際に触れる形にする
  • 市場やお客様の反応を見て、次に何を作るかを決める
  • 自社とAIで作ったものに技術的な目を入れ、事業として出せる状態まで持っていく
  • 現場で有効性が確認できた型を、既存のシステムにつなぎ込む

「何を作るか」が決まってから動くのではなく、
「何を作るべきか」から一緒に考える。

LIC株式会社は「Biz × Dev × AI」を掲げ、FDE事業のほか、AI活用の定着支援やシステムインテグレーションを手がける会社です。事業開発の現場に強いIMADEと、技術の実装に強いLIC。それぞれの得意領域を持ち寄ることで、「作る」から「事業として世に出す」までを一本でつなげられると考えています。

株式会社IMADE 代表取締役 今出遥揮
株式会社IMADE 代表取締役 今出 遥揮
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LIC株式会社 代表取締役 日山 英光

両社の代表はいずれも、事業の現場に立ち続けてきました。「技術をつくること」と「事業を伸ばすこと」を分けずに考えられる体制を、ここからつくっていきます。

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